宮田和幸が語る前田日明の「強さ」
格闘技専門誌「go fight」vol.1
- 出版社/メーカー: スコラマガジン
- 発売日: 2011/04/20
- メディア: ムック
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Uを引きずっている総合格闘技ファンには必読の書ではないでしょうか?
表紙がアレなので、はじめ食指が動かなかったのですが、買って大正解でした。
◆U系スタッフ座談会
など読みどころ満載なのですが、一番の収穫はこちら。
◆インタビュー:宮田和幸
「レスリングの元オリンピック日本代表は、前田日明さんに何を教わっているのか?」
一部抜粋。
(前略)
宮田:それに前田さんって、今でもすっげえ強いですから。スパーリングもさせてもらうんですけど、ホントに強いですからね。――前田さん、今もスパーリングされるんですか!?
宮田:やります、やります。当然、現役から離れているからスタミナはないですけど、パスガードとかハンパないですよ。スパーリングではまず極められないですから。僕も昔はいろいろなところに出稽古に行ってたし、グラップリングでも日本トップクラスの自信があるんですけど、お世辞抜きでやられますからね。極めというよりも、痛いんですよね。一個一個の技が。
――なんか分かるような気がします(笑)。
宮田:スネを極めたりするんですよ。自分のヒジを相手のスネに当てて、その相手の足の先を持ってグイ〜って引っ張るんです。すっげえ痛いし、体重もあるから、そこにガ〜って体重をかけられると、もう。
――体重を乗せられただけでも折れちゃいそうですよね。
宮田:あと、肋骨の間にヒジを入れて、そこに体重を乗せてペキペキペキ……とか。だから、いろいろ言う人は一回やってみたほうがいいですよ。僕もこの世界に入った頃は、噂で「プロレスラーは弱い」っていうのを聞いていたんですけど、マジ強いですから! 僕、最初にスパーした時、遠慮してやったんですよ。「親父に勝ちたくねえ」みたいな気持ちって分かりますよね?
――分かります。それに前田さんは現役ではないわけですから、競ったってしょうがないですからね。
宮田:最初は「あっ、スパーをやってくれるんだ」って思って、「いい記念になるな」みたいな感じでやったんですけど、そうしたら「あ、あれ……?」って。それから本気でやるようになりました。あと、技術的なことで言うと、僕が試合でやっているグラウンドでのボディコントロールというのは、前田さんとやっていることなんですよ。ずっと相手に圧力をかけて、相手が動いたらまた違うところに行って圧力をかけるという。それで相手はすごく削れているはずなんですよね。僕も疲れますけど、僕以上に相手は疲れちゃって、最後まで得意のパターンは出させないで勝つという。その練習は前田さんとやっているんです。
(後略)
これには正直、驚きを禁じ得ません。
前田日明が、宮田和幸や所英男を指導しているのはもちろん知っていましたが、教えているのは、ゴッチ式フィジカルトレーニングと、キックミットを持ってキックを受けることと、ちょっとした技術の提示くらいだと思っていました。
前田日明は、リングス時代には、ロシアから、サンボの大家であるヒョードロフ氏やズーエフ、コピィロフ、ハンらをコーチとして次々と招聘し、リングスジャパン勢と共に質問攻めにしていたという事実がありますが、逆に言えば、自分は、前田日明を、かつてゴッチから教わったこと、ロシアのサンボの技術の知識を得たことを以て、彼らの技術を「口伝」するという、受け継ぎ後代に伝える「ヴィークル」(運搬具)の役割を果たしているだけだろうと勝手に思っていたのです。
まあ、ヴィークルに変わりはないにしても、実体をもったヴィークルであったことにびっくりしたし、まさか(とりわけ今のあの体と年齢で)スパーまでしているとは夢にも想像していませんでした。
メディアでこういうことが語られたのは、初めてじゃないでしょうか?
前田ファンではありましたが、正直、現代MMAの技術体系を観るにつけても、現在において、“格闘家”前田日明という存在をなめていました。
なかなかやるもんですねえ。
自分だけではなく、内心、前田日明については、小馬鹿にしていた人の方が多かったのではないかと思います。
いやあ、感心しました。
と同時に嬉しい収穫でもありました。