絶対の自信をもってオススメする「アレとは違う夢枕獏」。

たまには小説の話でも。まずは夢枕獏編1です。

「『陰陽師』の夢枕獏」が嫌いな、あるいは気に入らない、もしくは、あの小説に流れている雰囲気ややりとりや文体がどうもダメだなあという人に、もちろんそれが好きな人にも、なんとしても! お勧めしたい夢枕獏の小説に、上弦の月を喰べる獅子」と「神々の山嶺とがあります。

騙されたと思って、是非に是非に手に取ってみて下さい。もし万が一お気に召さなかった場合には代金は……(嘘)。

上弦の月を喰べる獅子〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

上弦の月を喰べる獅子〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

神々の山嶺 上 (集英社文庫)

神々の山嶺 上 (集英社文庫)

前者上弦の月を喰べる獅子」は、日本SF大賞星雲賞など数多くの受賞をした、和製SF小説の金字塔です。とはいえ、「SF小説」が嫌い、聞いただけでダメ、などという方もご安心を。そうきいてアタマに浮かべたような小説ではありません。そこら辺に転がっている「SF小説」では味わえない「読後感」が間違いなくそこにはあります。SF小説嫌いの人も騙されたと思って……(略)。

後者神々の山嶺は、上記「上弦の月を喰べる獅子」以上に、読みやすく間口の広い、それでいて、涙無しには読めないクライマックスを含めて、実に様々な感情と感慨を抱ける傑作山岳小説です。
言うまでもないことですが、登山のことなんかまるで知らなくたって関係ありません。
乏しいボキャブラリーで月並みな表現しかできませんが感動せずにいられない滂沱の涙を誘う傑作です。

二作とも、それぞれの事情で、単行本から文庫になる際に(「神々の山嶺」はストーリーに関わるものも含めて)加筆修正がされていますが、文庫版で、全然問題無いと思います。


さて、「神々の山嶺」で、「知らなかった夢枕獏」に出会った貴方!
そういう人には、「風果つる街」「鮎師」「空手道ビジネスマンクラス練馬支部」の三作をお勧めします。

風果つる街 (角川文庫)

風果つる街 (角川文庫)

鮎師 (文春文庫)

鮎師 (文春文庫)

空手道ビジネスマンクラス練馬支部 (講談社文庫)

空手道ビジネスマンクラス練馬支部 (講談社文庫)

「風果つる街」は、将棋指しのお話。
「鮎師」は、釣り師のお話。
「空手道ビジネスマンクラス練馬支部は、あることをきっかけに空手を始めたサラリーマンのお話です。

どの作品も、「神々の山嶺」に通底する、「狂おしいほどの何か」に執着せずには生きられない人間が活写された、読者に「心にひっかかる何か」を感じさせずにはいられない「たまらない」小説です。
「風果つる街」などはちょっと古い作品ですが、大ヒットしている将棋マンガ「ハチワンダイバー」とはまた違う、それでいて「濃さ」と「熱さ」では負けない作品です。
古い作品もあり、手に入りづらいものもあるかと思いますが、探して読む価値ありありです。

是非!

【追記】ああ、忘れてました、忘れてました……

「涅槃の王」も絶対のお勧めです!
こちらは、バイオレンス・アクション要素と夢枕獏の仏教理解・空海大好きという要素の融合で、ひとつの結実と言えます。アクション要素の強い作品群の入り口としても最適でしょう。第一巻だけ、デビュー間もない頃に書かれた独立した話になっていますが、真骨頂は第二巻からでしょうね。

涅槃の王〈1〉幻獣変化 (祥伝社文庫)

涅槃の王〈1〉幻獣変化 (祥伝社文庫)

……是非!!

追記:夢枕獏の次は……ハズレなし!