夢枕獏「船戸与一はすげえぜ」から始まった読書遍歴。

あれは、もう何年前のことでしょう。
自分は、まだガキながら、既に小説読みではありましたが、冒険小説・ハードボイルド小説という分野に未踏だった時期でした。

当時は、夢枕獏が一番のお気に入りで「キマイラ」シリーズや「闇狩り師」シリーズも読み耽っていました。
あるとき、夢枕獏さんが、その「キマイラ」のあとがきで「船戸与一『山猫の夏』はすげえぜ」と題する文章を書いたときがありました。

自分の本のあとがきで、他人の本を絶賛する、しかも表題がそれである、というのは、非常に珍しいことですが、自分は、「そうなのか、じゃあ読んでみよう」と、既に文庫化されていた船戸与一「山猫の夏」と出逢ったのです。

山猫の夏 (小学館文庫)

山猫の夏 (小学館文庫)

それは、一種の衝撃でした。もちろん、今でも夢枕獏さんは大好きで、特に「神々の山嶺」などは、生涯ベストと言ってもいいくらい好きですが、船戸与一さんは、獏さんとはまったく別種の才能――異能とでも表現すればいいでしょうか――を持った物書きでした。

そして、船戸与一さんの小説を貪るように読むことになります。「猛き箱舟」には、特にノックアウトされました。

猛き箱舟 上 (集英社文庫)

猛き箱舟 上 (集英社文庫)

猛き箱舟 下 (集英社文庫)

猛き箱舟 下 (集英社文庫)

こうして船戸与一さんとの付き合いは、「無冠の帝王」と呼ばれていた船戸さんが遂に直木賞を受賞した「虹の谷の五月」まで続くことになります。

虹の谷の五月 上 (集英社文庫)

虹の谷の五月 上 (集英社文庫)

その後の船戸さんの作風は、残念ながら、自分の好みとは違う方向へ行ってしまいましたが、「虹の谷の五月」までの船戸与一作品は「すべてが傑作」と言っても過言ではないと思います。「炎流れる彼方」「蝦夷地別件」「流砂の塔」「砂のクロニクル」……。

炎 流れる彼方 (集英社文庫)

炎 流れる彼方 (集英社文庫)

蝦夷地別件〈上〉 (小学館文庫)

蝦夷地別件〈上〉 (小学館文庫)

流沙の塔〈上〉 (徳間文庫)

流沙の塔〈上〉 (徳間文庫)

砂のクロニクル〈上〉 (新潮文庫)

砂のクロニクル〈上〉 (新潮文庫)

そして、これも現在では好みではなくなってしまった作家ですが、逢坂剛さんの著作群にも吃驚させられました。
カディスの赤い星」をはじめとするスペインものなどがそうです。

新装版  カディスの赤い星(上) (講談社文庫)

新装版 カディスの赤い星(上) (講談社文庫)

この逢坂剛さんにどうやって辿り着いたかと言えば、それは、最初に読んだ船戸与一作品である「山猫の夏」文庫本の「解説」で逢坂剛カディスの赤い星」に触れられていたからです。

その後、自分は、国内作家から始まり、海外作家に至るまでのいわゆる冒険小説・ハードボイルド小説を渉猟することになります。

そこで見つけた中の一端に触れたのが以前に書いたエントリです。

夢枕獏の次は……ハズレなし!

思えば、遠くへ来たもんだ……。