夢枕獏「船戸与一はすげえぜ」から始まった読書遍歴。
あれは、もう何年前のことでしょう。
自分は、まだガキながら、既に小説読みではありましたが、冒険小説・ハードボイルド小説という分野に未踏だった時期でした。
当時は、夢枕獏が一番のお気に入りで「キマイラ」シリーズや「闇狩り師」シリーズも読み耽っていました。
あるとき、夢枕獏さんが、その「キマイラ」のあとがきで「船戸与一『山猫の夏』はすげえぜ」と題する文章を書いたときがありました。
自分の本のあとがきで、他人の本を絶賛する、しかも表題がそれである、というのは、非常に珍しいことですが、自分は、「そうなのか、じゃあ読んでみよう」と、既に文庫化されていた船戸与一「山猫の夏」と出逢ったのです。
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それは、一種の衝撃でした。もちろん、今でも夢枕獏さんは大好きで、特に「神々の山嶺」などは、生涯ベストと言ってもいいくらい好きですが、船戸与一さんは、獏さんとはまったく別種の才能――異能とでも表現すればいいでしょうか――を持った物書きでした。
そして、船戸与一さんの小説を貪るように読むことになります。「猛き箱舟」には、特にノックアウトされました。
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こうして船戸与一さんとの付き合いは、「無冠の帝王」と呼ばれていた船戸さんが遂に直木賞を受賞した「虹の谷の五月」まで続くことになります。
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その後の船戸さんの作風は、残念ながら、自分の好みとは違う方向へ行ってしまいましたが、「虹の谷の五月」までの船戸与一作品は「すべてが傑作」と言っても過言ではないと思います。「炎流れる彼方」「蝦夷地別件」「流砂の塔」「砂のクロニクル」……。
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そして、これも現在では好みではなくなってしまった作家ですが、逢坂剛さんの著作群にも吃驚させられました。
「カディスの赤い星」をはじめとするスペインものなどがそうです。
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この逢坂剛さんにどうやって辿り着いたかと言えば、それは、最初に読んだ船戸与一作品である「山猫の夏」文庫本の「解説」で逢坂剛「カディスの赤い星」に触れられていたからです。
その後、自分は、国内作家から始まり、海外作家に至るまでのいわゆる冒険小説・ハードボイルド小説を渉猟することになります。
そこで見つけた中の一端に触れたのが以前に書いたエントリです。
思えば、遠くへ来たもんだ……。