北野武国外受賞歴と好き嫌い-1

この度、映像作家(本当は死ぬまでお笑い芸人)・北野武が、第30回モスクワ国際映画祭の「特別功労賞」を受賞しました。みんなもう慣れっこです(笑)。

こうして眺めてみると改めてその受賞の数々、凄さがわかります。

北野武・北野作品(主要国外受賞歴)

3-4x10月
 ☆トリノ国際映画祭[イタリア]
  特別賞

ソナチネ
 ☆タオルミナ国際映画祭[イタリア]
  カリッディ金賞
 ☆コニャック国際映画祭[フランス]
  批評家賞
 ※カンヌ映画祭の「ある視点部門」出品
 ※イギリス国営放送BBC「21世紀に残したい映画100本」選出

HANA-BI
 ☆ベネチア国際映画祭[イタリア]
  金獅子賞
 ☆ヨーロピアン・フィルム・アワード[アメリカ]
  スクリーン・インターナショナル賞
 ☆サンパウロ国際映画祭[ブラジル]
  批評家賞

Dolls
 ☆ダマスカス国際映画祭[シリア・アラブ共和国]
  最優秀作品賞

座頭市
 ☆ベネチア映画祭監督賞(銀獅子)[イタリア]
  観客賞
  オープン2003賞
  DIGITAL AWARD
 ☆トロント映画祭[カナダ]
  観客賞(グランプリ)
 ☆シッチェス・カタロニア国際映画祭 [スペイン]
  グランプリ[最優秀作品賞]

◇監督ばんざい!
 ☆ベネチア国際映画祭[イタリア]
  Glory to the Filmmaker!賞

北野武
 ☆フランス政府
  芸術文化勲章シュヴァリエ[レジオン・ド・ヌール勲章]/1999年※フランスの最高勲章
 ☆イタリア
  ガリレオ2000賞/2006年
 ☆カンヌ国際映画祭
  「世界の巨匠35人」に選出/2007年
 ☆第30回モスクワ国際映画祭
  特別功労賞/2008年



※上記はコピペ改変修正(厳密には違いますが)

  • よく、「つまらない映画」しか獲っていないのに、

1.海外で受けたもんだから、持ち上げられているだけ

 …とおっしゃる方がいます。北野作品は、好き嫌いのはっきり出るものであり、ハリウッド映画のようなエンタメ路線でもないので、「嫌い」「どこがいいのかわからない」という人の話はわかるし、あって然るべきですが、根拠なく海外評だけで持ち上げられているのではなく、例えばあの蓮實重彦氏は、「3-4X10月」「ソナチネ」の頃から、「今までのように海外で評価されて初めて日本で認められるという形にするのではなく積極的に世界に発信していこう」と発言し、早くに北野作品を最大級の評価で讃え、紹介もしていました。一例です。それと、実は、初期の作品は国内の賞もわりと貰ったりしているんですよね。

2.で、小難しいことを言っている一部の映画評論家たちが評価したから、持ち上げられているだけ

 …とおっしゃる方もいます。それも違って、僕などは、「3−4X10月」で打ちのめされ、「ソナチネ」でノックアウトされたクチです。あの「冗長な間」や「饒舌な沈黙」とでも言うべき「行間」にハマれるかどうかで好悪が分かれるのでしょう。それは、NHKの番組で海外の批評家が「北野の映像は圧倒的にオリジナルなんだ」と縷々評した部分とも重なります。「ソナチネ」が公開される前に、これもNHKの番組で(まわし者ではありません(笑))、“例のジャンケンのシーン”が流されたとき、スタジオにいた泉谷しげるさんと大槻ケンヂさんが「凄いねえ」「いいねえ」「たまらないよなあ」と口々に言っていたのを思い出します。

3.客が入ってないじゃないか、見られていないじゃないか、そんな映画のどこに価値がある

 …とおっしゃる方もいます(津川雅彦さんとか)。いますがしかし、そうした、「数」で語る批判は間違った道に入りやすい批判だと言えるでしょう。「数」で語られるべき問題ではないと僕は思います。
 本や活字の世界についても同様のことが言えますが、何百万部と売れ読まれ、そして明日には忘れ去られていくマンガ雑誌がある一方で、数少ないながらもその少ない読者に深い印象を与え、または、感動を与え、語り継がれていく、そういう本もまた存在するわけです。また、海外という空間的な広がりもあります。
 客が入らない、イコール駄目映画という等号で結ぶことはできないわけです。


とりあえず、このあたりでいったん閑話休題