寺井壽男校長発言を考える。過剰なる「政治的正しさ」

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20160315-00000875-fnn-soci

「子ども2人以上産むこと」発言の中学校校長の処分検討 市教委

フジテレビ系(FNN) 3月15日(火)12時35分配信
大阪の市立中学校校長が、全校集会で、「女性にとって最も大切なことは、子どもを2人以上産むこと」などと発言し、教育委員会が、処分を検討している。
校長は、講話は1年間を通して行っていて、問題はないと釈明した。
大阪市立茨田北(まったきた)中学校の寺井壽男(ひさお)校長(61)は2月、「女性にとって最も大切なことは、子どもを2人以上産むことです」、「これは、仕事でキャリアを積むこと以上に、価値があります」などと発言した。
寺井校長は15日、会見を開き、「年間を通して聞けば、問題はない」と釈明した。
寺井校長は、「究極を言えば、出産に価値があります。だから『出産を先にして、あとでキャリアを積みなさい』という話をしたんです」、「(言葉足らずだとは思う?)シリーズで話していますから、そこだけ切り取られれば、言葉足らずといわれても仕方がないですけれども、言葉は尽くしてます」と語った。
大阪市教育委員会は、不適切な発言だったと判断して、処分を検討している。

発言要旨全文

 今から日本の将来にとって、とても大事な話をします。特に女子の人は、まず顔を上げてよく聴いてください。女性にとって最も大切なことは、子供を二人以上生むことです。これは仕事でキャリアを積むこと以上に価値があります。

 なぜなら、子供が生まれなくなると、日本の国がなくなってしまうからです。しかも、女性しか子供を産むことができません。男性には不可能なことです。

 「女性が子供を2人以上産み、育て上げると、無料で国立大学の望む学部に能力に応じて入学し、卒業できる権利を与えたらよい」と言った人がいますが、私も賛成です。子育てのあと大学で学び、医師や弁護士、学校の先生、看護師などの専門職に就けばよいのです。子育ては、それほど価値のあることなのです。

 もし、体の具合で、子供に恵まれない人、結婚しない人も、親に恵まれない子供を里親になって育てることはできます。

 次に男子の人も特によく聴いてください。子育ては、必ず夫婦で助け合いながらするものです。女性だけの仕事ではありません。

 人として育ててもらった以上、何らかの形で子育てをすることが、親に対する恩返しです。

 子育てをしたらそれで終わりではありません。その後、勉強をいつでも再開できるよう、中学生の間にしっかり勉強しておくことです。少子化を防ぐことは、日本の未来を左右します。

 やっぱり結論は、「今しっかり勉強しなさい」ということになります。以上です。


私は、(真正保守ではない)右翼的精神論には与しません。
本件の寺井壽男校長が、どういう政治思想の持ち主かも知りませんし、「子育てのあと大学で学び」の箇所も含め、全面的に諸手を挙げて賛成しているわけでもありません。

しかし、一教師であろうが、校長だろうが、教頭だろうが、ひとつに統一されたのっぺりとした政治思想や社会思想だけを語るべきだとも思っていないのです。

「この程度の発言」が、全国ニュースになって、マスコミから吊し上げをくらい、指弾されるというこのポリティカルコレクトネス(政治的正しさ)を強制する「空気」の蔓延こそが問題だと思うのです。

この寺田校長は、テレビでのぶら下がり取材に対し、「あなたは毎年、何十万人の堕胎が行われているか知っていますか?」と言い返していましたが、テレビのコメンテーターは、そこには何も言及しませんでした。

テレビでは、街頭インタビューでまたぞろ聞いた風なお決まりの批判コメントをしている一般の人たちがいました。

曰く、「産みたくても産めない人もいるのに……」
曰く、「経済的事情で産めない人だっているのに……」

この校長だって、上記文章を読めばわかるように、「産みたくても産めない人」に、「産め」なんて言わないでしょう。現に言っていません。「経済的事情で産めない人」に、「それでも産め!」なんて言わないでしょう。そんなことはちょっと考えればわかりそうなものです。(「経済的事情で産めない人は堕胎を避けるためにも避妊するように」くらいはこの校長なら言いそうですが)

むしろ、私がこの件をきっかけに言いたいことがあります。

民主党政権時代に限らず、現政権も「一億総活躍社会」「女性の社会進出促進」などと繰り返し言っていますが、もしこの校長が「女性はキャリアを積んでどんどん社会に進出して活躍するように!」と言っていたら、問題視されていたでしょうか? 言挙げされていたでしょうか? 「処分を検討」されていたでしょうか?

されていなかったでしょうし、実際、全国津々浦々で、現在進行形で、おそらくその種の発言は為されているでしょう。

これが、そのときどきで変わる、主としてメディアや知識人が振りまいている「空気」を読んで発言するという「ポリティカルコレクトネス」(政治的正しさ)に寄り添った無難な発言なのです。

しかし、「女性の社会進出」などというのは噴飯ものの意見です。それでは、専業主婦は、現在、「社会内にいない」とでもおっしゃるつもりでしょうか? 「社会」に「進出すべき」ということは、そういうことです。

これは、はっきり言って、専業主婦を舐めすぎです。虚仮にしているのです。小馬鹿にしているのです。

「家族」という最小単位の共同体の中で、毎日繰り返し主婦業をするということが、子どもという若い世代や親・祖父母という上の世代、隣近所や町内会との折り合いをつけるということが、どれだけ大変なことか。(確かに手を抜こうと思えばいくらでも手を抜けますが)母親を病気で亡くして炊事洗濯をはじめとした「専業主婦」的なことを長らくやってきた男の私でも、それぐらいのことはわかります。

「専業主婦なんて辞めて会社でサラリーマンやってね」、なんていうことが「総活躍」であり、それが「女性の進出」などと言うのなら、そんなもの、私は平気で蹴飛ばしますね。

勿論、「政治的正しさ」を踏まえて書くのなら、こんなところでも、いちいち、「共働きなら、家事は分担しましょうね」くらいの当たり前のことを断っておかなければならないのでしょう。

イヤな「空気」ですね。やれやれです。

【追記】

なにやら教室で授業のような記者会見を行ったようで、テレビで観たら、言及はされていませんでしたが、背景の黒板に「おすすめ本、茂木健一郎のなんたら」みたいな文章が見えて、しばし頭を抱えてしまいました(爆笑)。しかし、上記文章を訂正する必要を私は感じていません。