北野武監督受賞歴まとめ。『アウトレイジ ビヨンド』DVD発売記念
北野武さんの『アウトレイジ ビヨンド』のDVD・ブルーレイが発売されました。
アンディ・ラウが審査委員長となった第7回アジアン・フィルム・アワードの監督賞受賞作です。
意図的にエンタメ寄りに撮った作品なので観客動員も申し分無しでした。
- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
- 発売日: 2013/04/12
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以前の、私のエントリ「北野武作品、極私的ランキング」http://d.hatena.ne.jp/manji_ex001/20100315/1268628456
での位置づけで言えば、前作『アウトレイジ』と共に、『座頭市』と同じ「番外」に置かれることになりそうです。(「番外」は評価が低いということではありません。念の為)
ここで、北野武監督の受賞歴を振り返ってみたいと思います。
思い込みとは異なり、監督作品初期作も国内で既にそれなりに高い評価を得ていたことがわかります。
逆に、「世界の北野」と呼ばれるようになってからの方が、国内では冷遇されているのですね。日本アカデミー賞の持ち回りが……むにゃむにゃ……馬鹿馬鹿しい話です。
以下
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■国内(主要なもののみ掲載・新聞社系の受賞も除外)
▼ゴールデン・アロー賞
・北野武(第35回映画賞、第38回映画賞)
▼ブルー・リボン賞
第34回(1991年度)
・作品賞 『あの夏、いちばん静かな海。』
・監督賞 北野武『あの夏、いちばん静かな海』
第39回(1996年度)
・監督賞 北野武『キッズ・リターン』
第41回(1998年度)
・作品賞 『HANA-BI』
・監督賞 北野武『HANA-BI』
・主演男優賞 ビートたけし『HANA-BI』
▼第4回文化庁優秀映画賞・長編映画部門優秀映画賞『Dolls』
▼第7回文化庁優秀映画作品賞・長編映画部門 『キッズ・リターン』
▼第6回日本映画プロフェッショナル大賞・監督賞 『キッズ・リターン』
▼第1回文化庁優秀映画賞・長編映画部門優秀映画賞 『菊次郎の夏』
▼ヨコハマ映画祭・監督賞 (『その男、凶暴につき』)
・監督賞 (『あの夏、いちばん静かな海。』)
▼キネマ旬報
読者選出日本映画監督賞 北野武(『あの夏、いちばん静かな海。』)
読者選出日本映画監督賞 北野武(『座頭市』)
読者選出日本映画ベスト・テン第1位 「HANA-BI」(監督:北野武)
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■海外
▼『ソナチネ』
・タオルミナ国際映画祭「カリッディ金賞」
・コニャック国際映画祭・批評家賞
・イギリス国営放送BBC「21世紀に残したい映画100本」
▼『HANA-BI』
・ベネチア国際映画祭・金獅子賞
・ヨーロピアン・アカデミー賞「スクリーン・インターナショナル賞」
・サンパウロ国際映画祭・批評家賞
・オーストラリア映画批評家協会賞・外国作品賞
▼『Dolls』
・ダマスカス国際映画祭・最優秀作品賞(シリア・アラブ共和国)
▼『監督ばんざい!』
・ベネチア国際映画祭・Glory to the Filmmaker!賞(イタリア)
▼『座頭市』
・ベネチア映画祭監督賞・観客賞・オープン2003賞・DIGITAL AWARD
・トロント映画祭ピープルズ・チョイス・アウォード(観客賞=グランプリ)
・シッチェス・カタロニア国際映画祭グランプリ
グランプリ・最優秀映画音楽賞
観客賞
・フューチャー・フィルム・フェスティバル・ディジタル・アウォード
▼『アキレスと亀』
・ベネチア国際映画祭・白い杖(パストーネ・ビアンコ)賞(イタリア)
・テサロニキ国際映画祭・名誉賞『ゴールデン・アレクサンダー賞』(ギリシャ)
・ソフィア国際映画祭・観客賞(ブルガリア)
▼『アウトレイジ・ビヨンド』
・第7回アジアン・フィルム・アワード・監督賞
■北野武
・フランス政府「芸術文化勲章シュヴァリエ」
「芸術文化勲章・コマンドゥール」
・カンヌ国際映画祭「世界の巨匠35人」に選出
・イタリア・ガリレオ2000賞(イタリア大統領が後援する賞。デンマーク女王らが列席)
・「カイエ・デュ・シネマ」(1951〜)100号ごとに特別付録を出版
歴代責任編集者
100号 ジャン・コクトー
200号 アンリ・ラングロワ
300号 ジャン・リュック・ゴダール
400号 ヴィム・ヴェンダース
500号 マーティン・スコセッシ
600号 北野武 (2005年)
・2008年 モスクワ国際映画祭・特別功労賞
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■雑記
・ジャン=リュック・ゴダール
http://www.eris.ais.ne.jp/~fralippo/module/Translation/JLG021023_interview2/index.html
「ひとつ日本映画の中で、ここ四、五年、私が素晴らしいと思っている、北野武の映画があります。『HANA-BI』という作品です。私が『HANA-BI』を好きなのは、それが日本映画だからではなく、普遍的な映画だからです。そこに登場するほとんどの人物たちが一重瞼の細い目をしていることに気づかないほど、普遍的な映画だと思います。」
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■雑記2
・『Dolls』ロシアで2年間のロングラン上映。ロシアでの北野武人気。
北野監督、熱狂的歓迎=映画大学で「特別講義」−ロシア
【モスクワ21日時事】モスクワ国際映画祭で特別功労賞を受賞した北野武監督は21日、モスクワ市内にある全ロシア国立映画大学で約1時間半にわたって「特別講義」を行い、学生から熱狂的な歓迎を受けた。
ロシアで北野監督作品の人気は高く、同大学の大講堂は、詰め掛けた約600人の学生らで超満員。同監督は「偶然、映画監督になってしまった。完ぺきな映画を撮ろうとしては失敗し、やり直す。いつまでも映画を撮り続けるだろう。日本での監督としての評判はいいものではなく、たまに日本の恥と言われる」などとひょうひょうと語り、会場は笑いと拍手の渦に。
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■雑誌3
・『あの夏、いちばん静かな海』
黒澤明「あのサーフィンの話(「あの夏、いちばん静かな海」のこと)、あれもとても面白かった」
山田宏一「あれ(『あの夏いちばん静かな海』)は素晴らしい映画でしたね。静かな傑作と言いたいような……。」
淀川長治「ああいう綺麗な恋愛映画ないのよね、日本映画に。日本映画の歴史でも一番の映画やね。 」
ジャ・ジャンクー「あの夏、いちばん静かな海を観て感動した。」
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■雑誌4
・東京芸大大学院映像研究科で教鞭。
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以上。
『座頭市』についていえば、千葉真一さんあたりが、「日本の時代劇が誤解される。あんなのは認めない」と仰っておられましたが、ご自身の『影の軍団』の滅茶苦茶な時代考証や、もはやそんなものはかなぐり捨てて荒唐無稽を突き抜けていた『必殺』シリーズなどには一言もありません。近衛十四郎さんでしたか、時代劇のオープニングで麻雀やってる、みたいなのもありましたが、それは良くて、タップが駄目とはこれいかに?
「あの映画はちゃんと見ておいた方が良いよ」とグレート義太夫さんにアドバイスした北大路欣也さんの方がよほど器がでかいし視野も広いですよね。
「日本の映画監督は何を目指せば良いかわからない、大作もいきなりどっかから来た監督が撮るから大作を撮ることがトップの証にも夢にもならないし、賞も何度も同じベテラン俳優が貰っていて、日本アカデミー賞もアカデミックな賞でもないし、お笑いでM-1みたいなものを毎年BIG3が獲るみたいなことを繰り返している、ジャンル分けも無いし」
……という主旨の発言をしています。
本当にそうで、北野武さんが日本アカデミー賞から「出席してくれるなら賞を授与します」的なことを言われて「なんだよ、それ」と怒って出席を拒否してから、ノミネートすらされなくなりました。ベネチア銀獅子、トロントグランプリという華々しい賞を獲得した『座頭市』ですらそうなのです。客も入ってアジアン・フィルム・アワード監督賞の『アウトレイジ・ビヨンド』など言うまでもありません。なんなんでしょうね、これは。
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