2.「お笑い偏差値」という言葉への疑義

 「お笑い偏差値」という言葉を使い始めたのは誰なのでしょう? 松ちゃんその人でしょうか?
 それとも、松本人志のお笑いを理解できない人間を非難するためにファンの人が言い始めたのでしょうか そのあたりについては私はよく知りません。
 私は確かに松本人志ファンなのですが、しかし、これに限って言えばその手の物言いは間違っていると私は思います。
 「○○を理解できないのは、『お笑い偏差値』が低いからだ。残念な人ですね」というのが、どうにも受け入れ難いのです。
 確かに、「レベルの高い笑い」というものは「ある」と思います。
 それは、高度な知識や教養などを必要とする「笑い」です。それを知らないとちんぷんかんぷんで笑えない……そういう状況というのはあり得るわけです。

 しかし、『お笑い偏差値』が意味するところはそうではありません。「感性が無い、ダメダメ」とかそうした文脈の物言いです。

 だが、違うのではないでしょうか?

 上で言った「レベルの高い笑い」の要求する「高い知識や教養」を、「マンガでよくある類型」「ヒーローものの類型」「時代劇の類型」「学校でよくあった出来事の類型」「テレビでよく見た類型」……こういったものに置き換えたものが、例えば松本人志のお笑いであったりするのではないでしょうか。

 つまり必要とされるのは、ある程度の「同時代性」です。

 だから、どれだけ「笑い」を解する「頭」を持っていたとしても、「同時代性」を兼ね備えていないために「笑えない」ご年配なんかも当然おられるのではないでしょうか?
 そうした人に、「『お笑い偏差値』が低いですね」などという言葉は、的を大きく外していると僕は思います。