産経新聞『半沢直樹』記事に呆れた話。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130811-00000539-san-ent

半沢直樹」諸説は間違い…人気の秘密は“アニドラマ”にあり

産経新聞 8月11日(日)21時41分配信
半沢直樹」諸説は間違い…人気の秘密は“アニドラマ”にあり

ドラマ「半沢直樹」に出演する堺雅人(右から2人目)ら豪華キャスト(写真:産経新聞

 記者はその昔、東西の経済部で金融を担当していたことがあります。90年代後半、山一証券が自主廃業し、業務を停止したり(97年)、関西では第二地銀の経営破綻や合併が相次いだりと、いわゆる“金融危機”まっただ中の頃でした。

 “銀行が潰れる”という、あり得ない事態に連日、追い回されていた訳ですが、ひとつだけ、今も鮮明に覚えていることがあります。最後のバンカーと呼ばれる西川善文三井住友銀行元頭取(75)にインタビューした時のことです。

 西川氏が旧住友銀行の頭取だった頃だと記憶しています。別に得だねをもらっただとか、そういう自慢できる話ではないし、何を質問し、どんな話になったのかはほとんど覚えていないのですが、西川氏は突然、記者にこう問いかけたのです。

 「ところで君、貯金いくらある?」

 全く想定外の逆質問に面食らったのですが、確か、あまりの迫力とオーラにけっこういろいろ真面目に答えたと記憶しています。

 すると西川氏はこう言ったのです。

 「銀行に預けているだけか。金は遊ばせたらアカン!!」

 今なら「なるほど骨の髄までバンカーですなあ」と感心するのですが、当時は「行員だけやなくて、金にまで“働け”と大号令かけるんかいな。恐るべし」とビビりながら社に戻ったのでした…。

 なぜこんなことを思いだしたかと言えば、あの大人気のテレビドラマのせいです。「半沢直樹」(日曜午後9時、TBS系列)。先週4日放送の第4話の平均視聴率27・6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。前回を4.7ポイントも上回るなど、今期のテレビドラマの中で独走状態を続けています。

 さらに特筆すべきは、舞台がコテコテの大阪、それも「お金」というより「銭(ぜに)」という表現がぴったりの物語とあって、関西ではまるで箝口令(かんこうれい)でも敷かれたように、全く話題にのぼらないNHKの「あまちゃん」と違い、関西でも高い人気を誇っていることでしょう。

 某日本経済新聞みたいにお金のことをスカして&調子に乗って「マネー、マネー」と連呼する東京人と違い、重大局面ではお金のことを未だに「銭(ぜに)」と呼ぶ関西人は、こういう泥臭い金融ネタは関東人より元々、大好きなのです。

 それに、そもそも半沢直樹が働く東京中央銀行大阪西支店は、関西人なら誰でも知っている関西のランドマーク的存在の阪急百貨店。その前の歩道橋を悲壮な表情で猛ダッシュで走る半沢直樹に「道、分からんかったら、おばちゃん、一緒に行ったんで〜」「ところでアメちゃん、要る?」と応援した大阪のおばちゃん数知れず…。

 最近のテレビは壮絶に面白くないのでほとんど見ないのですが「関西の金融界が舞台のドラマが始まる」ということを知り、このドラマは1回目から見ているのですが、水戸黄門だとか余りにリアルな銀行員の姿とストーリーだとか、てんで的外れな論評が巷を席捲しているので、本コラムではその点について反論させていただこうと思います。

 まずは「善悪がはっきりした分かりやすい水戸黄門みたいなドラマ」だとか何とかいう論評について。これは完全な見当外れ。水戸黄門張りに分かりやすいドラマなんて他にも掃いて捨てるほどありますよ。

 このドラマ、確かにとにかく分かりやすいのは事実です。上司である支店長にハメられ、計画倒産で焦げ付いた取引先への融資5億円の回収を命じられる主人公、半沢直樹堺雅人)が、責任をすべて自分になすりつけて逃げ切ろうとする支店長にリベンジするという物語は、確かに誰にでも分かる勧善懲悪劇ですが、それが分かりやすい理由ではありません。このドラマの分かり易さの根源は、漫画のカット割りや表現方法をドラマに流用していることです。

 見ていて気付いたのですが、このドラマ、主題歌も何もなくいきなり始まりいきなり終わります。無駄な説明や演出が一切ありません。記者は見終わった後、何だか人気の週刊漫画をコンビニで立ち読みしたような感覚に襲われました。

 ホラー映画みたいなおどろおどろしい雰囲気のなか、殺気だった恐ろしい目付きで「倍返しだ!」とたんかを切る半沢直樹や、いちいち過剰&大袈裟な「大和田暁常務」こと香川照之の演技、説明不要のお色気要員「藤沢美樹」こと壇蜜、オネエ言葉の「国税局統括官」を演じる片岡愛之助などなど、どいつもこいつもまるで漫画のキャラ。それに、はっきり言えば、週刊漫画のカット割りをアニメにせず、そのまま実写にしたような作風です。

 語弊を恐れずに言えば、このドラマは、ドラマに漫画の手法を持ち込んだことで大成功を収めたといえるでしょう。まさに“アニドラマ”です。その証拠に、このドラマと同じ直木賞作家、池井戸潤さん原作のNHKのドラマ「七つの会議」は、このドラマと同じ位、善悪がはっきりしたサラリーマン社会の内部告発を扱った物語でしたが、大して話題になりませんでした。

 理由は簡単。週刊漫画に徹し切れなかったからです。本コラムを書くため、録画していた知人に見せてもらいましたが、半沢直樹と比べると無駄だらけでスカスカ。でも映画やドラマではこの無駄、すなわち視聴者の想像力に訴えかける物語に関係なさげな演出の数々に作り手のこだわりが感じられる訳ですが、いまの視聴者にとっては作り手のこだわりなんて単なる“大きなお世話”なのかも知れません。

 そして、余りにリアルな銀行員の姿とストーリーだとかいう論評について。アホですか?。リアルな銀行員、それも関西の銀行員なんて、あんなのじゃないですよ。関西で働いていたことのある、とある旧都銀の行員からかつて聞いた話。

 「僕ら、新規の取引先開拓によく行かされるんですけど、けっこう嫌われてましてね。多分、昔、融資のことで揉めたんやと思いますけど、大抵、名刺渡したらめちゃくちゃ言われて、名刺ビリビリに破り捨てられるんですよ。そんでね、そのことを上司に報告したら『名刺破りよったやと?。よっしゃ、も一回、その会社行ってこい!』って言われるんでっせ。理由、何やと思います?。『嫌いは好きの裏返しや。興味あるということや。いける』と」…。

 4日放送分で、ネイルサロンの経営が夢の壇蜜扮する西大阪スチールの社長(計画倒産の首謀者)の愛人に「あんなヤツに頼らず、自分の力で起業しろ。うちには君に合った融資制度がある」と訴える場面に、感動した視聴者もおられると思いますが、銀行の融資というのは基本「晴れの日に傘貸して、雨の日に返してくれと迫ってくる」というのが常識でありまして。そもそも、救いの手を差し伸べるなら、無担保、金利なしにしなはれや、と突っ込みたくもなりますね。

 そしてこの4回目。憎っくき支店長と西大阪スチールの社長との計画倒産共謀を臭わせるツーショット写真で支店長を脅し、挙げ句の果てには支店長室に無断で侵入。机の引き出しを引っかき回して、証拠(通帳)を入手するといったくだりのどこがどうリアルなんですかね?。こんなもん、人気漫画「ミナミの帝王」の主人公で、10日で1割の金利を取る闇金萬田金融」を切り盛りする萬田銀次郎はんとやり方、全くおんなじやおまへんか〜。

 そもそも、大阪の泥臭い金融ドラマなら「ミナミの帝王」の方がよっぽどよく出来ていますよ。「倍返し」どころか、金利をしばらく入れなかった債務者はパンツ1丁にして体中に蜂蜜か何か塗りたくって、夏の雑木林に括り付けて放置ですからね。そしたらそいつが万馬券を隠し持っていたことが発覚。「最初からちゃんとこれ出しいな〜」で一件落着。これが浪速の金融道でござんす。

 もっともお金を「マネー」とのたまうスカした関東人には全く受け入れられないでしょうけど。しかし、半沢直樹を見ながら、「金は遊ばせたらアカン!!」(西川氏)だけでなく「世の中は金持ってるヤツが一番偉いんじゃ!。金借りたヤツには、死ぬ権利なんかないんじゃ!」(萬田銀次郎)という強烈なメッセージこそが本当の“リアルな表現”ではないかと痛感した次第です。

 今回の本コラムでは勝手なことを書かせていただきましたが、半沢直樹の爆発的成功で、おっさんの視聴に耐えうるテレビドラマが増えてほしいと思います。それにしても半沢直樹が作り出した“アニドラマ”が、これからの流行になりそうな気配です。(岡田敏一)

 【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部などを経て現在、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当。ロック音楽とハリウッド映画の専門家。京都市在住。

以前から、池井戸潤小説を愛している者として一言。
ドラマ『半沢直樹』のアレンジも感心しながら満足して観ています。

さて、この記事、色々と酷い文章です。
まず、この筆者は、「?」や「!」の後に句点を打つなんていうことを平気でしています。
三点リーダーも「…」ひとつ。
ひとのことは言えない日本語力ですが、本当に天下の産経新聞がこれを配信した(載せた?)のですか? (「?」の後は空白一文字)と疑問に思うくらいです。

それで、視聴率は確かに関西は高いですが関東でも高いですし、27%超え云々は書かれているとおり、関東地区の話です。大阪関係ありません。

第6話からは東京が舞台ですが、視聴率は急降下するのでしょうか?

このドラマが単純な勧善懲悪ドラマだから受けたというのが全肯定できないのは確かですが、そういう側面もあります。「カタルシス」というやつです。私は、これを「池井戸フォーマット」と呼んでいます。

そして、『七つの会議』の視聴率も注目度も確かに低かったし、ドラマのつくりとして、あまり褒められないものでしたが、同じ池井戸潤原作のWOWOWドラマ『空飛ぶタイヤ』は語り継がれるほど賞賛されています。数々の賞を総なめにし、観た人を虜にしました。『下町ロケット』だって激賞されています。

それに、漫画のカット割り(?)を使っている云々はいいですが、何故それが「アニドラマ」になるんでしょう?

「漫画」と「アニメ」を一緒くたにするという暴挙。

そして、この筆者は、本当にこのドラマをちゃんと見てるのでしょうか?
「晴れの日に傘貸して、雨の日に返してくれと迫ってくる」っていう話は、このドラマの中でも登場していたのですけどね……(三点リーダー2つ)。

【追記】裏付けが取れました。

上記、岡田敏一さんの記事がいかに的外れか、当該ドラマの演出をしている福澤克雄さんの言葉で裏付けが取れました。原作の面白さと黒澤映画『用心棒』的な面白さを目指したおかげ、という主旨です。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130812-00017385-toyo-soci

(前略)
 あとは、悪役は悪役らしく、ヒーローはヒーローらしく、わかりやすく。『用心棒』では、新田辛之吉を演じた加東大介さん、清兵衛の女房おりんを演じた山田五十鈴さんのような名優が悪役を見事に演じている。今回も、国税局の黒崎を演じている片岡愛之助さん、東田を演じる宇梶剛士さんなど、悪役としてオファーをして“わかりやすい悪役”として出演してもらっています。
(後略)