海堂尊と夢枕獏と北野武自伝と。

海堂尊ジェネラル・ルージュの凱旋」(上)(下)

ジェネラル・ルージュの凱旋(上) (宝島社文庫)

ジェネラル・ルージュの凱旋(上) (宝島社文庫)

ジェネラル・ルージュの凱旋(下) (宝島社文庫)

ジェネラル・ルージュの凱旋(下) (宝島社文庫)

海堂尊の本を読むのは、これが2作目です。
この作品は、田口&白鳥シリーズ3作目ですが、2作目を読んでいません。
しかし、読む上で問題はありませんでした。
最初に読んだのは、鳴り物入りでデビューした、シリーズ第一作目「チーム・バチスタの栄光」でした。
発売されてすぐに読んだことを覚えています。
文庫化された本作は、実に久しぶりの、現在売れに売れている海堂尊体験だったのですが、楽しく読めたことは読めました。
しかし、解説で本作を絶賛されている大森望さんには悪いのですが、いかんせん自分には、やはり「軽すぎる」作風でした。

以前、自分の好きな作品群を羅列しましたが、


[読書]絶対の自信をもってオススメする「アレとは違う夢枕獏」。
http://d.hatena.ne.jp/manji_ex001/20090904

[読書]夢枕獏の次は……ハズレなし!
http://d.hatena.ne.jp/manji_ex001/20100119

傑作! 冲方丁天地明察
http://d.hatena.ne.jp/manji_ex001/20100517

ライトノベル川原礫が面白い!
http://d.hatena.ne.jp/manji_ex001/20100514


それを眺めていただければ自明なように、自分は重い作品が好きなのです。(ラノベ作家を褒めていたとしても(笑))

結局、自分には、海堂尊さんは肌に合わないな、と感じることになりました。

ところで、宝島社には少々文句をつけたい。
こんな薄い本をどうして上下巻で発売する必要があるのでしょうか。
あまり感心しませんね。

夢枕獏「天海の秘宝」(上)(下)

天海の秘宝(上)

天海の秘宝(上)

天海の秘宝(下)

天海の秘宝(下)

こちらは、色々あるけれどもそれでも好きな作家の一人、夢枕獏さんの作品です。
しかし、今作は惜しかった。
伏線が張ってあるので、書き始めの当初から着地点は考えていただろうと窺えるのですが、前半のグイグイ引っ張っていく面白さ、中盤の大きな盛り上がりが、残念な終盤でかき消えてしまった感があります。
最後の方は、急に本格SFじみた展開になるのですが、そのせいで、「あの時代に凄いことを考えていた主人公・法螺右衛門」の魅力がごっそりそげ、凡人と化してしまうのです。
いつもの調子で、伝奇小説として立派に終わって欲しかった。
作者の着想からしてそれは無理な相談なのですが、そういう無理を要求したくなる、個人的には残念な「大団円」でした。
しかし、一言付け加えておけば、そこが許せるなら、本作は、魅力的な一品でしょう。
朝日新聞社発行ということで(?)初刷部数を押さえているようで、近隣の書店をハシゴしましたが、どの書店にも置いておらず、結局アマゾンで買いました。
このまま読まれないままでは惜しい作品でもあるので、未読の方には、ご一読をオススメしておきます。

北野武、ミシェル・テマン(松本百合子訳)「KITANO PAR KITANO -北野武による『たけし』-」

Kitano par Kitano 北野武による「たけし」

Kitano par Kitano 北野武による「たけし」

非常に面白い作品でした。これがフランスの書店で平積みで販売されていることを思うと感慨深いです。
しかし、著者が、「完璧な通訳をしてくれた」と感謝の意を表しているのがゾマホンさんなのですが、彼の日本語力を度々TVで目にしているだけに「本当に大丈夫だったんかいな」という気持ちが頭をよぎるのは、自分だけではないはずです(笑)。
本作で、たけしさんは饒舌に色々なことを語っていますが、例によって、たけしさんは、同じことについてもまったく真逆のことを余所で語ったりする天の邪鬼な人なので、完全に真に受けてはいけないでしょう(笑)。
たけしさんは、自分というものをつかまえられるのを逃れよう逃れようとする「分析されることが嫌い」な人なのです。
質問者がどういう質問・話し方をしたのかによっても、たけしさんの回答は変わっていくでしょう。
どこでのどの発言に真実が何パーセント含まれているかを判断するのは、読者にゆだねられています。
でも、この本での発言にも確実に何割かの「本音」が含まれていて、それをフランスの読者が読んでいるわけですから、それも含めて読み進んでいくと、非常に面白い読後感が待っています。
満腹でした。